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毎日、完全醗酵(して生きたい日記)

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「美酒の設計」

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 「醗酵リンク」の主催者で、日本の美味しい本物の醗酵食品や純米酒について書かれている藤田千恵子さんの新しい本です。
 この本では、純米酒の「雪の茅舎」を作っている齋彌酒造(さいやしゅぞう)の高橋藤一杜氏のお酒造りや、その生き方について書かれています。お酒造りのお話だけでなく、どんなお仕事にも通じる物作りへの考え方がとても勉強になります。
 
 高橋杜氏のお酒造りの特徴の一つは「櫂入れ」をしないことです。「櫂入れ」とは、蒸し米、麹、水が混ざり合った醪(もろみ)を、櫂棒という長い棒で撹拌する作業のことです。これは、お酒造りの業界では常識とされる作業ですが、高橋杜氏はこれは「必要がない」と思い、止めてしまったそうです。「櫂入れ」は醪を均一化するために混ぜ合わせる作業ですが、長年観察していて、混ぜなくても発酵中に発生した炭酸ガスによって、自然な対流が起こっていることに気がついたそうです。高橋杜氏は、「酒は私が作るのではない。微生物が作ってくれるんです。酒は授かり物。人間は酒できてくる手助けをするだけ」と言い、「タンクの中は微生物の世界。人間のしゃしゃり出て行く世界ではありません。ですから、そこに櫂を入れるようなことはいたしません」とおっしゃっています。まるで、畑を耕さない「不耕起栽培」みたいですね。
 
 他にも印象的だったことは、「麹」を作る際には通常、麹菌の胞子である「種麹」を蒸し米に振る作業を「麹室」(こうじむろ)という部屋でやるのですが、高橋杜氏は麹室の中ではなく、その前段階の釜場で、自ら種を振るうという話しです。それは、蔵人の中に、細かな麹菌の胞子を吸って鼻や喉が荒れたり、肌がかぶれる人が何人か出て、「これは爽やかではない」と思って考え直したからだそうです。この業界の伝統といわれるものであっても、「自分が体験してみて嫌だと思ったこと、一緒に仕事をする人たちが辛そうだなと思った事は、自分の代限りでやめよう」と思ったそうです。人としてとても尊敬してしまいます。

 後、高橋杜氏が常に心がけていることは、蔵を清潔にすることだそうです。日本酒は、麹菌、酵母菌、乳酸菌などの微生物の「絶妙な連携プレイ」によって作られていて、雑菌の汚染を避けることがとても大事です。「自分が蔵のために、酒のために最大限にできることはなにかと考えたなら、それは環境の整備なんです。蔵を清潔に保って菌のバランスを整えることが人間の仕事」。そのために、「箒と雑巾は、蔵のどこにでも置いてある」そうで、「全員がガラス拭きから仕事を始めます」。すごいですね(見習いたいです)。
 美味しいお酒を造る酒蔵などを訪れると、お米一つ落ちていなくてとても清潔です。お酒ができること、「お米という個体が液体のお酒になる」ことは、昔から神秘的で、神の介在とも言われていましたが、きっと「神様」が降りてきてくださるには、その場を「清める」必要があるのかもしれないですね。
 お酒造りだけでなく、高橋杜氏の生き方、考え方がとても勉強になりました。お勧めの本です。
 
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by kanzenhakkou | 2010-01-10 12:27 | Comments(1)
Commented at 2010-01-29 11:25 x
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