前回からの続き。
ブドウの搾り汁(モスト)を加熱するための鍋に移します。バルサミコ酢とワインビネガーの違うところは、同じようにブドウを原料にしていても、バルサミコ酢の方は果汁を一度加熱して煮詰めているところが特徴です。
BRIX計で果汁の糖度を計ります。
煮詰め作業。家々で異なりますが、果汁は大体3分の2くらいまでに濃縮されるそうです。
しばらく加熱していると、タンパク質などの物質が凝固して、プリンのような塊が表面に浮いてきます。アクは取り除いてバケツに入れて行きます。このアクも、先ほど残った搾り粕と混ぜて、再び発酵させます。捨てるところなどないぞ!と教授は叫んでいました。
ここのやり方では、一度沸騰させてから90度くらいまで下げて、12時間〜14時間程煮詰めるそうです。その日のうちに移動しなければならなかったので、全行程が見られなくて残念です・・・
ここは、バルサミコ特有の熟成樽が並ぶ熟成室。主に、屋根裏部屋などの暖かい場所に置かれます。最初の樽に移された煮詰めた果汁(モスト・コット)で、酵母菌によるアルコール発酵と、そのアルコールが酢酸に変わる酢酸発酵(酢酸菌によって)がほぼ同時に起こります。鹿児島の黒酢を思い出します。発酵のスターターとして、よく酢酸菌の菌膜が入れられます:madre「お酢の母」(酒母みたい・・・)。
教授のところでは、果汁はまずタンクに移されて、アルコール発酵と酢酸発酵を分けていました。
(多分。笑)
見学に連れて来てくださった伊藤さん(雑誌
「住む」の発行人)、と全ての案内をしてくださったイタリアの食のエキスパートの大隈さん。伊藤さんが編集をされて、大隈さんとレオナルド・ジャコバッツィさんが共同著書のバルサミコ酢についての本
「バルサミコ酢のすべて」、すごく勉強になります!
熟成樽の中。若いものから、何十年ものまでいろいろ試食させて頂きました。モデナの伝統的なバルサミコ酢(Aceto Balsamico Tradizionale di Modenaと名乗れるもの)は少なくとも5つの樽に移し替えながら、12年以上熟成させなければなりません。毎年春に、次の樽に移し加えられます。
伝統的な製法で作られる、Tradizionaleとつくもの(DOPの指定を受けているもの)は高価なので、多くの人が家庭で料理に使っているものは、同じ工程で作られていても熟成期間が短かったり、もっと安価なものはモスト・コット(煮詰めた果汁)の分量が少なく、ワインビネガーを主体にカラメル、香料などが添加されているものが多く出回っています。そういったものの表記は単に「aceto balsamico」や「condimento balsamico」(バルサミコ調味料)になります。
どこの国も流行のものには、ネーミングの上でグレーゾーンあり?
お昼ご飯は、ジューディチ教授のお兄さんの農場で野外ランチを御馳走になりました。料理もパンもホームメイドです。気さくな教授、いそいそと食事をサーブ中。
ワインも自家製。赤(ランブルスコ)と白がありました!白ワインはとてもどぶろく風です(笑)。楽しいなあ〜。日本も家庭での醸造が許されていたら良いのに〜。(先進国の中で唯一違法?)
本当に貴重な経験をさせて頂きました。ジューディチ家の皆さん、ありがとうございました!
旅はつづく。